ああぁ!クソ!なんでだよ!
なんでオレじゃなくておめえなんだよ!
オレは努力したよ お前の10倍 100倍 いや1万倍努力したよ!
なのに、なんでお前なんだよ!

映画「ピンポン」の中で、幼馴染のスマイルと対戦し己の才能の無さに絶望したアクマの叫びである。

これと同じことが競馬の中では起きている。

スピードは先天的な影響が大きい。成長し筋肉がついてスピードが出るようになるが、その成長速度と到達点は馬の個体によって大きく違う。脚が遅い馬が速くなることは絶対にない。大トビの馬はいくら鍛えて筋肉がついても大トビのままだ。ブラストワンピースがいくら鍛えても、逆立ちしたってマイラーにはなれない。逆にアーモンドアイはひょっとするとスプリントGⅠを勝ってしまうくらいのスピードがある。日本の競馬が時計勝負をしている以上、スピードは多くの場合において正義である。

先天的にスピードのある馬は心肺機能が鍛えられることで持ち時計を更新していける。ダートを馬なりで1F11秒台を刻んでいけるスピードがあるとしたら、トレーニングでそれを維持できる距離を伸ばしていくことで1分12秒が11秒台になり、10秒台になる。ダートの1200mで逃げ馬が強いのは、逃げられるだけのスピードがある馬が、持ち時計を更新して勝ってしまうことで成り立っている。

しかし1F11秒台を全力じゃないと走れない馬は、どれだけトレーニングを積んでも1分12秒を切ることが難しい。人間もそうだが全力疾走なんてもって10秒かそこらだ。500万下で追い込む競馬を繰り返す差し馬は物理的な時計の壁があるので、冬場で極端に時計が遅くならない限り勝ち上がるチャンスは巡ってこない。その数少ないチャンスでさえも才能のある先行馬が出走してきたら潰される。

「飛べねえ鳥もいるってこった」アクマの言葉通りである。切ないがそれが現実だ。

となると、狙うべきはスピードのある馬だ。道中持ったまま先行できる馬。こいつらが強くなるのを期待するのが一番効率良い方法になる。

先週のPaddocシートから条件戦のスピードのある、ない馬を色別に仕分けした。ちなみに未勝利戦はもうスピードのある馬が勝ち抜けてしまってスカスカの状態。


中山は芝が荒れてスピード優先になっているのはダートの1200mだけだが、阪神はいろんなコースがスピードに寄っている。関東も東京に開催が移ればスピード一色になる。冬がスタミナが問われる時期なら春から秋はスピード優先の競馬が待ってる。スピードのある無しは道中の位置取りだけでもある程度想像がつくが、今後はもう少しスピードのある無しについてのコメントを増やしていこうと思う。特に夏から始まる2歳戦においてスピードの有無を確認することが、将来の種蒔きとなるからだ。

才能は無いが努力の人アクマ。その対極にあるのが幼馴染のペコ。才能はあるが努力ができないポンコツのヒーローだ。卓球を諦めたアクマに諭され、競馬で負けてポケットに60円しかない警官に橋の上からの飛び込みを諭され「I can fly」で川に飛び込んだ日からペコの新しい人生が始まった。

才能があるからといって順調にトレーニングを積み立てられなければ強くなれないのは競馬も一緒。最初からは上手く飛べない才能のある馬だっている。そんな才能を見つけ、成長過程を見ることが競馬の楽しみでもある。